南宋の周輝が『清波雑志』で記録したところによると、「汝窯は宮中で焼成を禁じられており、釉薬には瑪瑙が含まれている。御用に供するもの以外は売り出されることが許されず、最近では特に入手が難しい」とのことです。

これは、汝州地域が瑪瑙の産地であり、その量が多く大きな塊で存在することを示しています。また、汝窯青磁の釉薬を配合する際に瑪瑙が使用されていることも明確に示しています。

実際、物産が豊富な汝州は宋代には商人が集まる場所であり、文化の蓄積も長い歴史を持っています。貞観の盛世によって汝州の経済は前例のない繁栄を迎え、汝河両岸の山々には陶磁器製造に適した大量の瑪瑙原料が埋蔵されていました。

汝窯青磁の釉薬の質感は古玉のようで、温かみがありながらも眩しい光沢がありません。実際の操作過程で、釉薬に含まれる瑪瑙成分が釉面の潤沢さに重要な役割を果たしていることがわかりました。瑪瑙の品質の違いが汝窯の釉薬の質感と色合いに影響を与えます。

汝窯から出土した汝磁片の成分を分析した結果、そのデータと考古学的文献を参照することで、宋代の汝窯が焼成時に瑪瑙を釉薬に加えていたことがさらに証明されました。

では、なぜは瑪瑙を釉薬に使うのでしょうか?実際の操作過程で、瑪瑙を釉薬に使用することには二つの利点があることがわかりました。

1. てんせいいろの釉色の形成に有利であること。

胎釉に瑪瑙(二酸化ケイ素)を加えることで、低ケイ素高アルミの状況が改善され、釉薬の焼成温度が低くなり、胎の焼成温度が制約され、てんせいいろ釉色の形成が促進されます。

 2. 乳濁玉質感の効果を促進すること。

大量のカルシウム長石の析出を促進し、釉薬が乳濁した玉質感の効果と天青色の色合いを生み出すことができます。

このように、宋代の汝窯の窯工たちは化学や物理の知識が乏しい中で、釉薬に瑪瑙を加え、窯の温度をコントロールすることで、乳濁した玉質感の強い天青色釉を焼成するために、数多くの試行錯誤を繰り返したに違いありません。この独特の東洋芸術を生み出したのです。